2013年11月30日開催 NSFF 福岡県直方市須崎町映画祭

林芙美子が創作と映画に出逢ったまち 福岡県直方市須崎町商店街

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3. 林芙美子が毎日通った映画館が『開月館(現サンリブ直方)』だったとする根拠

『放浪記』には開月館(かいげつかん)という名前は記されていません。12歳のころ、この場所で映画に出逢い、毎日映画館に通った想い出は語られていても、その映画館の名前は明記されていません。

 では、どうして開月館だと断定できたか。

 国立国会図書館所蔵の直方町案内(1917年版:Web上にて閲覧可能 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/958232 )29頁にはこうあります。

 『本町内に於ける劇場の重なるものは─中略─このほか、
  活動常設開月館ありて年中斬新奇抜なるフィルムを観せ
  観客を満足せしめ居れり』

 当時、劇場と呼ばれる施設の主流は芝居小屋であり、まだ珍しい常設の活動写真の劇場としては唯一、大正三年竣工の開月館だけが紹介されています。つまり、林芙美子が直方に滞在した1915年。この時期に直方に存在した映画館は開月館だけ。
 こうした理由から、12歳の林芙美子が、カチューシャを見に、毎日通ったという映画館は『開月館』だったと考えられています。

 JR直方駅前にあった『開月館』は幾度か改築されたのち、1970年代に廃業。その跡地にはマルショクが建設され、現在はサンリブ直方として、やはり地域の人々が集う場所としてにぎわいをみせています。


映画祭当日、須崎町商店街の南側入口付近、須崎町公園では、特設ステージで手作りのライブが開催されています。そしてそのステージのすぐ後ろにあるのが、サンリブ直方。98年前、12歳の林芙美子が映画と出逢った場所。

生演奏に身を委ねながら、遠い昔の少女の物語に想いを馳せてみる。当日はぜひ、そんな風情もお楽しみください。