2013年11月30日開催 NSFF 福岡県直方市須崎町映画祭

林芙美子が創作と映画に出逢ったまち 福岡県直方市須崎町商店街

戻る 進む

1. 林芙美子が『放浪記』に書いたのは、直方の「悪口」か?

 林芙美子の自伝的小説『放浪記』冒頭には、「放浪記以前」として、福岡県直方市の様子が描かれています。
 13歳の頃、尾道に転居して以降のエピソードは有名ですが、尾道以前の幼少期の描写の、そのほとんどは直方滞在時のエピソードで埋められています。
 それにちなみ直方には、林芙美子の記念碑がいくつか建てられてました。しかし、不思議なことにそれらに引用されている林芙美子の言葉は、直方を描写した言葉ではありません。
 その理由としてよく耳にするのは、引用にふさわしい部分がないということ。たしかに直方では、「芙美子は『放浪記』で直方の悪口を書いた」とよく言われます。「あまりいいことは書かれてない」との声をよく耳にします。
 しかし本当にそうなのでしょうか?林芙美子は思い入れ深い尾道のエピソードの前に、5000文字以上にもわたって、わざわざ「悪口」だけを書く必要があったのでしょうか?
 尾道での美しい想い出とのコントラストを際立たせるためだともいわれます。しかし、それだけでしょうか。直方は単なる尾道の引き立て役なのでしょうか。
 だとするとあまりに悲しすぎるので、そうじゃない部分を探してみることにします。

 実際に、原文に触れていただけるよう『放浪記』冒頭の直方のエピソード全文を、別ページにご用意いたしました。

■ 放浪記冒頭 http://www.nsff.jp/horoki.html

  直方市須崎町映画祭のイベント内容をご紹介する前に、このイベントのコンセプトである「林芙美子が創作と映画に出逢ったまち」の解説として、まずはこの『放浪記』冒頭に書かれた、「悪口」「踏み台」以外の部分をご紹介しながら、林芙美子が5000文字以上にもわたって綴ったこのまちへの想いの「明」の部分にスポットをあてていきたいと思います。